文化祭
俺には妹がいる。とても可愛い。割と仲が良く、一緒に静岡まで旅行をしたことがある(ちなみに苺ましまろの舞台巡礼に行った。二人とも好きだから)
妹は文化祭の劇でお姫様の役をやっていた。当然主役だ。なぜなら俺の妹はとても可愛いくて、尚且つ人にとても愛されているからだ。俺はその舞台を見にいくことはできなかったのだけれど、舞台衣装を着てるところは見ることができた。泣きそうだった。俺が。
その後、両親が劇をビデオで録画してくれたので、俺はそれを繰り返し何度も何度も見た。俺は妹がセリフを覚えるために主役以外の部分を担当して家で一緒に練習したからキャラクターが全員、何を言うかは知っていた。しかしそれでも俺は劇で泣いた。「きっと夢は叶うわ」とドレス姿の妹が言ってくれる。
しかし、そんな妹とも実家を離れたら連絡を取ることは無くなった。家にいた頃は毎日のように夜遅くまで、話していたが、メールなんて三ヶ月に一回する程度だ。とりわけ疎遠になる出来事があったわけではない。ただ世界はそう言った法則で動いていて、大人になれば関係は途絶えていくものになる(高校からの親友との連絡も同じ法則によって減少傾向にある)
以前、実家に寄る用事があった時、そのデータを発見した。文化祭の劇のデータだ。俺はそれをコピーして家に持ち帰った。最近はその動画をよく夜に見ている。滅多に飲まないアルコールか毎日飲んでいる向精神薬かあるいはその両方を飲みながら見ている。
「きっと夢は叶う」と妹は言ってくれている。しかし、人生は何もかもままならない。そのことだけが歳をとる度に判明していく。昔どれだけ仲が良くてもある種の人は孤独に孤独になるようにデザインされているような気がする。相変わらずその劇を見ると泣くのだけれど、昔とは違う理由で泣いている。そのことに気づく度に自分の中で何かが形成されていくのがわかる。それが信念と呼ばれるものに変わっていく感覚がある。
先日、一年ぶりに心理テストを受けたら中度うつ病から重度うつ病へと変化していた。全てが極めて不愉快だ。